困ってるひと (大野更紗著/ポプラ文庫刊)
まだ自分の病気が何者かもわかっていない頃、
初診で病院に行った時の、いまでも印象に残っている先生の言葉がある。
「まずは治る病気なのか、治らない病気なのか調べましょう。」
あたり前に聞こえるかもしれないが、その選択肢が印象的だった。
「治る病気の場合、筋ジストロフィー、重筋力無力症などの筋肉の病気、頸椎症、多巣性運動ニューロパチー、またはCIDP、ギランバレー症候群などの脱髄性疾患や、多発性硬化症、膠原病などの免疫疾患などが考えられます。」
…と先生が挙げてくれた病気は、どれもこれも深刻そうな病気で、
いくら治らないALSよりマシと言われても、そっちの方が良いとはとても思えなかった。
「薬はあるといっても、副作用など別の問題があります。」という先生の説明に、
身体の中の血液がザーっと降りていく音が聞こえたような気がしたのも覚えている。
この本は、「皮膚筋炎」というきわめて稀な難病の闘病記。
治療法はあるけれど、深刻な副作用、痛い検査、長い入院生活と、
先生の言っていた「別の問題」が山のように襲ってくるとんでもない病気だ。
腰椎穿刺、針筋電図など、私が受けたのと同じ検査も受けていて臨場感が増す。
「じゃ、いくよ!痛いけどごめん!しばらく我慢して。」
………………(ブスッ)………………(グリグリ)………………!!!!
「いででででで!いたいよーいたいよー!」
筋肉まで針を刺してグリグリするのだから、そりゃ直球で痛い。
私は先生が上手かったのか、どちらの検査も思っていたよりは痛くなかったのだけれど、
もう二度と受けたくないのは確かだ。
筋生検においては、あまりの痛そうさに、私は受けなくて済んで良かったと心から思う。
確定するまでは痛い検査を受け続けるしかない。診断がついてつくづくラッキーだった。
福祉が難病向きじゃないというのは、ALS患者の方々も言っているけれど、
それにしても、こんなに困った毎日なのに、自分でどうにかするしかない現実がつらすぎる。
大野さんは、手足が麻痺している身では役所の手続きが大変すぎて、友人を頼っていたのだが、
「いい加減にしてほしい」と、ついにその友達たちにも見放されてしまう。
そもそも医療券の更新ってどうして半年ごとなのだろう?
治らない病気については、せめて1年に1回でいいと思う。
主治医に書いてもらう診断書も、私の病院では1通3,500円、発行に2週間かかる。
指定難病56疾患の患者が同時期に一斉に手続きをするのだ。
先生も大変である。
病院だって、区役所だって、交通費がかかる。
切り替え時期に申請したら、すぐにまた更新が必要になる。
例えば、ALS患者数は9,000人。
誤診が10%だとしても、8,100人がそのまま1年ごとに更新する訳で。
900人についても、ALSとしての医療費は使わないんだし、多少放置しても問題なさそう。
こういうのは無駄じゃないんだろか?
とんでもない不正をする人がいるのかなぁ。
今のシステムを変えると、どういう懸念があるのか知りたい。
田村厚生労働大臣、教えてください。
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