2014/10/15

まだ2ヶ月あるけど、たぶん今年一番面白かった本。

「寄生虫なき病」
(モイセズ・ベラスケス=マノフ・著/文芸春秋・刊)



花粉、食物、ダニ、チリ、化粧品…、
現代を生きる私たちにとって、アレルギーは、ごくありふれた疾患となりつつある。

●アレルギーは、アレルゲンとなる物質が身体に取り込まれることで、引き起こされている。

●近年アレルギー患者が増えているのは、
 大気や土壌などの環境汚染や、食品添加物、化学物質などのせいである。

…といったところが、一般的な認識ではないだろうか。

ところが、この本を読むと、そういった認識は決して間違いではないが、
アレルギーの本質的な原因を見誤っている可能性があると本書は指摘している。

そもそもアレルギーになってしまった原因が、

「アレルゲンが身体に入ってしまったから」ではなく、
もともと「存在していた何か」が無くなった結果だとしたら???


花粉症、喘息、アレルギー、そして多発性硬化症、炎症性大腸炎などの自己免疫疾患は、
免疫システムのアンバランスによって引き起こされているという。

実は寄生虫や微生物が、免疫のバランスを調整するためのキーマンらしい。

幼少の頃から、微生物の多い農場で過ごしたり、母親から受け継ぐ微生物が、
大人になってからのアレルギーや自己免疫疾患を防ぐのだ。

虫歯菌が増えることを恐れて、子供と同じ食器は使わなかったり、
抗菌グッズに囲まれて育つと、大人になってから実はもっと恐ろしいことが…?

都市化や寄生虫駆除が浸透してきた時期と、
アレルギー・自己免疫疾患の患者数増加は相関関係にあるそうだ。

多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、喘息などは、好発年齢が若い。
もし、幼少期の清潔すぎる環境が原因で病気になっているとしたら、
これからもっと患者数が増えていくのかもしれない。

現に潰瘍性大腸炎の特定疾患受給者数は、この10年間で爆発的に増えている。

▼参考(難病慢性疾患全国フォーラム2013資料より)
http://www.nanbyo.sakura.ne.jp/forum2013/s-kanazawa.pdf


だからといって今さらどうしようもない。子供時代には戻れないのだ。
これからは平均寿命が下がっていくのかもしれないという。

免疫を持っている老人の方が若者より元気で長生きという、
特殊な高齢化社会が、もしかしたら来るのかも…?

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