2015/11/23

入院中に学んだこと。

​筋力低下とか、耐性菌の感染リスクとか、
入院はできればごめんこうむりたいイベントだけど、
肩書きや地位もメイクも取り去って、
病衣1枚だけの勝負になると、逆に人となりがよく見えて面白い。

患者としてのふるまいも、学べるところが多々あって、
良い経験になったと思う。

5人部屋の私の向かいのベッドにいた私より少し年上の女性は、
脊髄損傷で1年近く入院されていた。

首から下はほとんど動かせないけれど、言葉は普通に話せるので、
食事介助や身の回りの世話などで、
入れ替わり立ち替り来る病院のスタッフとの愉快なやりとりが、
いつも聞こえてきて楽しかった。

そんなある日、ふと気づいた。

彼女は、本当に大丈夫になるまで「大丈夫」って言わない。
私は、多少不満があっても、心地よくなくても、
「あー、大丈夫です」って、つい言ってしまう。

それは、あとでいくらでも自分で修正ができるから。
でも彼女は、まわりの人が直してくれない限り、改善されることはない。

だから、何度も、何度でも、
「それ、違うから」
「今度から、こうしてください」
って、辛抱づよく説明する。

次第に、スタッフが自然にできるようになってきて、
それは、スタッフ自身の財産にもなるのだと思う。

彼女が、私より先に転院することになった日、
たくさんの先生や看護師、医療スタッフが彼女に挨拶にやってきた。
「勉強になりました。ありがとう」と、みんながお礼を言っていたのが印象的だった。

介護される側の心得は、
「感謝をしつつ、きちんと要望を伝えること。」なんだと、私も彼女から教わった。

このエピソードは、8月の話だけれど、
母や在宅の看護師さんにお願いすることがだんだんと増えてきて、
やってもらえることに、慣れすぎてしまわないように、
あとから読み返せるように書いておこうと思う。

2015/11/19

入院中、こころに残った言葉。

入院していた病棟に、脊髄損傷の男性患者さんがいた。

治験を受けているそうで、私が入院しているわずかの間に、
全く動けない状態だった状態からみるみる回復して、杖なしで歩くまでになった。
明るくてフレンドリーな人で、いつも様々な患者さんと話していた。
私は、どんどん治っていくことに羨ましいという気持ちを抑えられなくて、
あまり多くは話さなかったのだけれど、
退院前日に彼が言った言葉がとても印象に残っている。

「指一本でも絶望するやつもいれば、指一本しか動かないのに楽しそうなやつもいる。」

私たちは、つい失ったものにフォーカスしてしまいがち。
彼は一時的に首から下が動かせなくなった経験があるから、何かをさとったのだろう。

いまは私も、もし他の部分が無事に動くなら、
足の一本動かないくらいでは、平然としていられる自信がある。
足が動かなくても手が動くじゃん、ラッキーって言える。

ALSになる前だったら、小指一本動かないだけでも、
この世の不幸をすべて背負った気になっていたかも。

とはいえ、指一本でも楽しそうにしていられるかというと、
それは、私には無理だと思う。