2015/01/04

有言実行の人。

マドンナの首飾り―橋本みさお、ALSという生き方」
山崎 摩耶・著/中央法規・刊)


ALS患者で、橋本操さんの名前を知らない人は、
おそらくいないと思う。

罹患してまだ日の浅い私ですら、
お会いしたことはなくても、知っている。
ネットで病気のことを検索すれば、ほぼ100%の確率で、
彼女の活動や発言の記録に行き当たるからだ。

「マドンナの首飾り」は、
そんなALS患者のパイオニアともいえる、
橋本操さんの発症から今に至るまでの活動の記録。

人口呼吸器推進派の橋本さんの発言は時に過激で、
呼吸器をつける覚悟を持てない私には、
なんとなくお会いするのは憚れたりする。

だってね、この人の前では言い訳はできないのです。

「家族がいないから介護は無理。」

橋本さんは、旦那と子供に介護をやらせるのは無理と、
一人暮らしで24時間介護を実践。
家族の存在はもちろん生きる希望となっていただろうけれど、
もしシングルでも同じようにしていたのでは?と勝手に想像する。

「人の世話になって生きるのは嫌だ。」

橋本さんは、人に面倒を見てもらうのが気にならないそうである。
私は、トイレに一人で行けないという状態を想像するだに恐ろしい。ちっちぇえな私。

「お金がないので生きられない。」

自分で介護ステーションを立ち上げ、自活されている。
ALS患者に人口呼吸器をつけることが無意味ではないと、
デンマークの学会で、海外の医療者に訴えるために、
自ら街頭募金をして、渡航費用を捻出したそうだ。

ショッピングが大好きで、とても気前がよい。
これも一般的な難病患者像とは違う。
そういえば、札幌での中島孝先生のセミナーでも、
橋本さんから、六花亭のチョコレートのお土産を全員分いただいたっけ。
(※橋本さんは、体調不良のためセミナーには欠席されたのですが。)

できるかどうか考える前に「やる!」と決めてしまう行動の人。
有言実行の見事な生きざま。
患者自身が船長になって、自らの療養生活の行き先を決めてゆく。

橋本さんがそのように生きているということが、
心の支えになる患者はたくさんいると思う。
たとえ呼吸器を選ばなかったとしても。

平穏死をめぐる考え方には、賛同できない部分もたくさんある。
それでもなお、読んでいてとても勇気が湧いてくる本だった。


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