2015/01/06

こころ豊かに生きる人。

住めば都の不自由なしあわせ」
(西村隆・宮本雅代・著/いのちのことば社・刊)


お正月は、ALS患者さんの本を数冊拝読した。

この本は、以前「小さな死」という記事でご紹介した、西村夫妻の本。
人柄がにじみ出ているような、気持ちがほっこりする本だった。

本を著したり、表に出られているALS患者の方は、
”闘う”患者さんが多いように思う。
他の患者さんの相談に乗ったり、介護者を育てたりすることを生きがいとして、
自らの療養生活、在宅介護のリーダーとして、自分を位置づけている。
”そういう活動を通して、生きる目的を見つけよ。生き抜け!”という印象を受ける。

勇気づけられつつも、そんなタフネスは私にはないかも…と同時に思ったりする。

西村さんは少し違う。
ご本人いわく、病気と”闘う”というより、病と共存する”共病”。

まったく先の見えないALSとの生活。
病気と闘うと、病気だけに目が向いてしまう。
そのうちに自分一人が離れ小島にいるかのような気がして、
まっ暗闇にのみこまれそうになる。

西村さんは、そんなALSに苦しむ日々を通して、
いつしか「失ったこと」から「足りていること」に目を向けられるようになった。
西村さんには、普通の人には見えないものが見えている。

お父さんのエピソードが素敵だった。
一家そろってのお正月に、西村さんのお父さんが急につぶやく。

「最近になって、見るものがみんな、ピカピカ輝いて見える。一日一日が当たり前じゃなくて・・・」
「ぼくが言いたいのは、これが隆の生きている世界じゃないかって、ふと思いついた。いい世界だ・・・。」

他の家族は戸惑い、「動けない隆の世界がわかるわけがない。」と、お父さんを戒める。
でも、西村さんは自分の豊かな世界を共感してもらえて感謝する。

お父さんの言葉は真実だ。

「この風景は、もう見られないかもしれない。」

そう思うだけで、すべてがキラキラしてくる。

冬の空は、空気が澄んでいるので、とてもきれいだ。
忙しい毎日を過ごしていたときは、
頭の上に、こんなに美しいまあるい月がぽっかり浮かんでいることに気づかなかった。
決して病気にかかった自分に酔っているのではなく、
1日の中で、時間がとてつもなくゆっくり流れている瞬間がある…とでも言えばいいだろうか。
目に映るものが輝いて見えて、とても豊かな気持ちになる瞬間。

「足りないもの」と闘うことも素晴らしい人生だけれど、
「足るを知る」こともまた、幸せへの近道なのかも。

病気になったことで、欲張りではなくなった。
でも、生きているだけでOKという心境には到底なれそうにもないので、
悟りというには、まだまだ畏れ多い。
煩悩の数がせいぜい2ケタになった程度かな。(笑)

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